2025.11.20
研究開発

BRAF阻害剤「ビラフトビ®カプセル」の結腸・直腸がんに対する併用療法の一部変更承認を取得

  • BRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がんの一次治療を対象とした試験結果に基づき、ビラフトビ、セツキシマブおよび化学療法の併用療法が国内承認を取得
  • 国際共同第Ⅲ相試験でビラフトビ併用療法群は、主要評価項目で統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善が示された

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:滝野 十一、以下「当社」)は、本日、BRAF阻害剤であるビラフトビ®(一般名:エンコラフェニブ)カプセル(以下、ビラフトビ)について、抗ヒトEGFRモノクローナル抗体であるセツキシマブと化学療法との併用療法による、BRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん(CRC)に対する効能または効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得しましたので、お知らせします。

 今回の承認は、国際共同第Ⅲ相試験であるBREAKWATER試験(ONO-7702-03/C4221015)の結果に基づいています。本試験の無作為化第Ⅲ相パートでは、主要評価項目の1つである盲検下独立中央評価委員会(BICR)の評価による奏効率(ORR)において、ビラフトビ、セツキシマブおよびFOLFOX(5-FU/レボロイコボリン/オキサリプラチン)の併用療法(ビラフトビ併用療法群)は化学療法群*と比較して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました(60.9% vs 40.0%;p=0.0008)。また、もう一つの主要評価項目であるBICRの評価による無増悪生存期間(PFS)において、ビラフトビ併用療法群は化学療法群と比較して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示しました(PFS中央値:12.8カ月 vs 7.1カ月;ハザード比0.53;95%信頼区間:0.407 - 0.677;p<0.0001)。本試験におけるビラフトビ併用療法群の安全性プロファイルは、これまでに報告されている各薬剤のものと一貫しており、新たな安全性シグナルは認められませんでした。

 CRCの適応症に関して、2020年11月にビラフトビは、MEK阻害剤であるメクトビ®(一般名:ビニメチニブ)錠とセツキシマブとの3剤併用療法、およびセツキシマブとの2剤併用療法で、がん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発のCRCに対する効能または効果で承認されています。

 なお、ビラフトビは、2024年6月19日に厚生労働省より、BRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発のCRCの効能または効果で希少疾病用医薬品に指定されています。

*:抗VEGFヒト化モノクローナル抗体であるベバシズマブの併用もしくは非併用の化学療法

BREAKWATER試験(ONO-7702-03/C4221015)について

 BREAKWATER試験は、BRAFV600E 変異を有する治癒切除不能な進行・再発のCRC患者を対象にビラフトビ、セツキシマブおよび化学療法(FOLFOX[5-FU/レボロイコボリン/オキサリプラチン]またはFOLFIRI[5-FU/レボロイコボリン/イリノテカン])の併用療法の有効性および安全性を化学療法と比較評価した国際共同無作為化非盲検第Ⅲ相試験です。
 本試験の無作為化第Ⅲ相パートでは、BRAFV600E 変異を有する治癒切除不能な進行・再発のCRCの一次治療として、ビラフトビ、セツキシマブおよびFOLFOXの併用療法の有効性および安全性を化学療法と比較評価しました。患者はビラフトビ300 mgを1日1回、セツキシマブを2週間に1回およびFOLFOXを2週間に1回、疾患の進行または安全性などの理由により投与ができないと判断されるまで投与を受けました。本試験の無作為化第Ⅲ相パートにおける主要評価項目は、盲検下独立中央評価委員会(BICR)の評価による奏効率(ORR)および無増悪生存期間(PFS)です。副次評価項目は、全生存期間(OS)、実施医療機関の評価によるORRおよびPFS等です。
 また、本試験は、第Ⅲ相パートとは別に設定したコホートにおいて、ビラフトビ、セツキシマブおよびFOLFIRIの併用療法の有効性および安全性を化学療法と比較評価するため進行中です。

結腸・直腸がん(CRC)について

 CRCは、原発性に結腸または直腸に発生する悪性腫瘍です。日本では、CRCは最も多く、年間約14.5万人1)(全世界では約192.6万人2))が新たに診断され、死亡者数では年間約6.0万人1)(全世界では約90.4万人2))が報告され、肺がんに続いて2番目に多いがんです。
 日本では、BRAFV600E 変異陽性は、CRC患者の4.5 - 6.7%(欧米では5 - 12%)に認められ、BRAFV600E 変異のない場合と比べ予後が不良です3)。これまで、BRAF遺伝子変異を有するCRCの一次治療を適応として承認された薬剤はなく、アンメットニーズの高い領域で、ビラフトビが新たな治療選択肢となります。

  1. Globocan 2022: Colorectal Cancer, Japan, World Health Organization Available at:
    https://gco.iarc.who.int/media/globocan/factsheets/populations/392-japan-fact-sheet.pdf
  2. Globocan 2022: Colorectal Cancer, World, World Health Organization Available at:
    https://gco.iarc.who.int/media/globocan/factsheets/populations/900-world-fact-sheet.pdf
  3. 大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス、日本臨床腫瘍学会、第5版2023年3月

ビラフトビ®カプセル50mg、同75mgの概要

製品名 ビラフトビ®カプセル 50mg、同75mg
一般名(JAN) エンコラフェニブ
効能又は効果
  • BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫
  • がん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
  • がん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺癌
  • BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺未分化癌
用法及び用量

〈BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫、がん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺癌、BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺未分化癌〉

ビニメチニブとの併用において、通常、成人にはエンコラフェニブとして450mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

がん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌〉

セツキシマブ(遺伝子組換え)との併用、又はビニメチニブ及びセツキシマブ(遺伝子組換え)及び他の抗悪性腫瘍剤との併用、又はセツキシマブ(遺伝子組換え)との併用において、通常、成人にはエンコラフェニブとして300mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

製造販売 小野薬品工業株式会社

※今回の承認による改訂箇所は取り消し線および下線で表示

ビラフトビについて

 ビラフトビは低分子BRAF阻害剤です。BRAFは、MAPKシグナル伝達経路(RAS-RAF-MEK-ERK)における重要なプロテインキナーゼであり、この経路が、増殖、分化、生存および血管新生を含むいくつかの重要な細胞活性を調節することが示されています。この経路におけるタンパク質の不適切な活性化は、悪性黒色腫、甲状腺がんおよびCRCを含む多くのがんにおいて生じることが報告されており、ビラフトビはこの経路の重要な酵素を標的としています。
 日本では、当社が2019年1月にビラフトビとメクトビの併用療法によるBRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫に対する効能または効果で国内製造販売承認を取得し、同年2月より販売を開始しました。その後、2020年11月にビラフトビ、メクトビとセツキシマブの3剤併用療法、およびビラフトビとセツキシマブの2剤併用療法によるがん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発のCRC、および2024年5月にビラフトビとメクトビの併用療法によるがん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺がんとBRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺未分化がんに対する効能または効果で追加承認を取得しました。

小野薬品工業株式会社とPfizer社の提携について

 当社は、2017年5月にArray BioPharma Inc.(2019年7月よりPfizer Inc.の子会社)とBRAF阻害剤のビラフトビ(エンコラフェニブ)およびMEK阻害剤のメクトビ(ビニメチニブ)に関するライセンス契約を締結し、日本および韓国で両製剤を開発および商業化する権利を取得しました。