経営戦略
当社は2031年度をゴールとする長期ビジョンを策定しています。その実現に向けて中期的な成長戦略を定めるとともに、財務・非財務両面を包括したマテリアリティを特定し、持続的な成長を図っています。長期ビジョンにおいて目指すのは、国内製薬大手と同程度の年間2,000億円を研究開発に投資し、革新的な新薬を世界中に提供し続ける「グローバルスペシャリティファーマ」です。その実現に向けて15年間を3つにわけ、各5年の中期経営計画を進めています。2022年度からは第2期の中期経営計画を開始。3つの経営目標の達成に向けて、柱となる4つの成長戦略を推進するとともに、DXや人財などの経営基盤強化にも取り組んでいます。
サステナブル経営方針
持続可能な社会の実現に挑戦し続ける
当社は創業から300年以上、薬業一筋に邁進してきました。次の100年も持続可能な社会の実現に挑戦し続けるために、サステナブル経営方針定めています。
人々の健康への貢献
- 自社創薬に加えて、世界のトップサイエンティストと協働して医薬品の研究開発に挑戦し、独創的かつ革新的な医薬品を安心・安全・適切に患者さんに提供することによって、世界の患者さんやその家族に多くの希望を届けます。
- エビデンスに基づいた次世代ヘルスケア事業によって、人々がより健やかに生活できる社会の実現に貢献します。
成長戦略(第2期 中期経営計画)
経営基盤を強化し、4つの成長戦略を実践
「製品価値最大化~患者本位の視点で~」
患者さんとその家族のウェルビーイング(心身的・社会的・生活満足度が満たされている状態)実現に、医療従事者とともに挑み、その結果として新薬が速やかに浸透している状態を目指して、スピーディーかつ効果的な開発、競争力のあるマーケティング、そして精緻な情報提供・収集に取り組みます。マーケティング、情報提供・収集においては、医療課題に対して医療従事者とともに患者視点で取り組むスペシャリティ人財を育成するとともに、デジタルを活用して効果的かつ効率的な情報提供・収集を実践し、製品のポテンシャルを最大限引き出せるよう取り組んでいます。開発においては現在、重要戦略分野であるオンコロジー領域を中心に、100近くに及ぶ多くの臨床試験を行っています。
オンコロジー領域の主力製品の一つであるオプジーボでは、パートナー企業である米国ブリストル マイヤーズ スクイブ社とともに、適応がん腫の拡大・治療ラインの拡大・併用療法の開発を行い、製品価値の最大化を目指します。プライマリー領域の主力製品の一つであるフォシーガでは、パートナー企業である英国アストラゼネカ社とともに、糖尿病だけでなく、適応拡大した慢性心不全や慢性腎臓病患者さんにも、早く、確実に届けることにより、健康寿命延伸に向けた課題の解決にも挑んでいきます。
「パイプライン強化とグローバル開発の加速」
世界には現在も治療法のない病に苦しむ人が大勢います。当社は、いまだ満たされない医療ニーズに応えることができる「グローバルスペシャリティファーマ」を目指しており、医療ニーズの高いがんや免疫疾患、中枢神経疾患、スペシャリティ領域を重点研究領域に定め、それぞれの領域で疾患ノウハウを蓄積し、医療現場に革新をもたらす新薬を創出していきます。世界をリードする大学や研究機関、バイオベンチャー企業との研究・創薬提携を強化・拡充し、ファーストインクラスが狙える独自性の高いパイプラインの充実を図ります。
また、創薬テーマに応じたさまざまな創薬モダリティを活用し、独自性の高い自社創薬に挑み続けるとともに、ヒト試料を用いた非臨床データや臨床試験で得られたデータを積極的に用いた創薬標的の検証やトランスレーショナル研究の強化により、研究開発の確実性の向上に努めます。加えて、医療ニーズの高い分野での革新的な化合物の導入や新技術の獲得も、積極的に進めていきます。
グローバル開発では、今後の欧米での自社販売活動を視野に入れ、体制を強化するとともに、米国でのブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤であるONO-4059(日本製品名:べレキシブル錠)をはじめとして複数のプロジェクトの開発を加速させていきます。
「欧米自販の実現」
新薬を世界中に提供できるよう、海外での自社販売を目指して取り組んでいます。すでに、韓国、台湾では、現地法人を設立して自社製品の販売を開始しています。欧米についても、ONO-4059をはじめとした複数のプロジェクトの上市を見据え、自社販売体制の整備に努めています。ONO PHARMA USA, INC.においては、2021年4月のマサチューセッツ州ケンブリッジへのオフィス移転を機に、医薬品産業における経験が豊富である優秀な人財を獲得することで競争力のある組織体制づくりを進めています。また、欧州については、実施中の臨床試験の状況を鑑み、メディカルアフェアーズ、マーケティングや営業等の自社販売組織構築の検討を進めています。
「事業ドメインの拡大」
拡大するヘルスケア分野のニーズを捉え、新たな価値を提供し続けるため、事業ドメインの拡大に取り組んでいます。これまでの医療用医薬品の研究開発で当社が培ってきた資産を最大限に活かした商品やサービスの開発・製品化に取り組んでおり、2022 年には、機能性表示食品 睡眠サプリメント「REMWELL(レムウェル)」を発売しました。脂質研究のパイオニアとしてリピドサプリ事業を通じて、今後さらにさまざまな健康課題の解決に取り組みます。また、デジタルを活用し、顧客の未解決課題と向き合い、新たな価値創出に挑戦するため、2022 年に株式会社michitekuを設立しました。さらにこれらの活動と並行して、小野デジタルヘルス投資合同会社を設立し、ヘルスケア分野でのベンチャー企業への投資活動を通じて新たな事業の創出/ 拡大を目指します。
「デジタル・ITによる企業変革」
事業環境が大きく変化するなかで、全社横断的にデジタル・ITを活用することにより、ダイナミック・ケイパビリティの高い企業への変革を目指しています。そのためには、社内外のデータ活用環境と独自の視点によるデータ分析能力、最新テクノロジーに支えられた柔軟なIT基盤が必要となります。 社内外のデータを活用し、ビジネス上の課題や新しい機会を適時的確に検知・判断し、ビジネス変革の構想に反映・実装していきます。
「成長戦略を支える経営基盤 : 無形資産の拡充」
4つの成長戦略を支え、飛躍的な成長を果たすため、人的資本、企業ブランド、デジタル・IT基盤等の無形資産の拡充に取り組みます。人的資本の拡充では、多様性の向上に注力したうえで、全社横断的な人財の育成とともに、各成長戦略を推進するための人財の育成を図ります。また、特に欧米進出で大きな課題となる企業認知度の向上については、「革新的な医薬品」「Pharma」「社会から必要とされる企業」といった企業ブランドの浸透に努め、企業価値の向上に努めます。
マテリアリティ(経営の重要課題)
財務と非財務を統合した「経営の重要課題」に取り組む
サステナブル経営方針と成長戦略のもと、財務と非財務を統合した経営を推進していくために18のマテリアリティを特定しています。マテリアリティごとに取り組みを推進することで、当社と社会、双方の持続可能性向上を目指します。
価値創造プロセス
独創的かつ革新的な医薬品を世界へ届けることで持続可能な社会を実現させます。
中長期投資方針
持続的な成長を目指して、研究開発など戦略投資と株主還元をバランスよく行っていくことが中長期の財務方針です。
売上収益拡大による営業キャッシュ・フローの継続的な充実で安定した投資原資を確保しつつ、政策保有株式縮減を通じた資産効率の向上にも取り組み、創出されたキャッシュは投資対効果を検討しながら研究開発をはじめとした成長のための投資に投下していきます。さらには成長の実現と財務基盤の健全性を確保しつつ、安定した株主還元も実施していきます。
投資方針
積極的な研究開発投資や戦略投資を行うなかでも、当社の投資採択基準を厳格に適用し、価値創造の担保と利益の確保に努めます。
2022年度から2026年度の5年間は、2021年度と比較して1桁台後半の年平均成長率で売上収益の拡大を図ります。そして、売上収益の20~25%程度を研究開発に投資しつつ、営業利益率は25%以上を維持することを目指します。売上収益の拡大と積極的な研究開発投資によって利益拡大を図ることで、短期志向に陥ることなく株主資本コストを上回るROEを達成できると考えています。
資金調達については、円滑な事業活動に必要となる流動性を確保し、市場環境などを考慮したうえで、有効かつ機動的に実施していきます。当社グループでは流動資産が流動負債を大きく上回っており、資金の源泉については、事業から得られる資金と内部資金を充当しています。
成長投資
持続的な成長のためには戦略的な投資が欠かせません。積極的な成長投資により研究開発費は増加するものの、売上収益の拡大により利益拡大を図ることで、ROEの水準を高めていきます。また、株主還元をバランスよく行い、適切な株主資本の水準を保っていきます。
独創的かつ画期的な新薬の創製を目指すとともに、開発パイプラインの拡充を実現するため、積極的な研究開発投資を行っています。売上収益の拡大とともに、研究開発費をまずは1,000億円台まで拡大し、2022 年度から2026年度の5 年間累計で6,000 億円規模の研究開発投資を行う予定です。
具体的には、世界最先端の技術を有するバイオベンチャーとの創薬提携はもとより、大学などの研究機関との創薬研究につながる研究提携を積極的に進めていきます。2022年度末時点では国内外で約300件以上の共同研究を行っており、今後もさらに拡大していく予定です。また、数年で上市が期待できる開発後期段階の化合物はもとより、開発早期段階(前臨床やフェーズI段階)であっても魅力的な化合物については積極的に獲得すべく、ライセンス活動を強化しています。さらに、2020 年7月に設立した「OnoVenture Investment Fund I, L.P.」ではシード期にある創薬ベンチャーへの投資を行います。なお、通常の研究開発費とは別に、PoCを確立した化合物のグローバル権利を獲得するなど創薬事業強化を目的に、2022年度からの5 年間で1,500 億~2,000 億円の投資を行っていきたいと考えています。
中長期的に海外開発拠点・販売網の拡充を図るとともに、最新の創薬活動や安全かつ効率的な生産活動を維持していくために必要十分なIT・デジタル投資、研究・生産設備への投資も積極的に行います。
海外開発拠点・販売網の拡充については、米国ではBTK阻害剤「ベレキシブル錠」の上市を見据え、自販体制構築を加速します。また、欧州では開発の進捗を考慮しながらマーケティングや営業などの自販に向けた組織体制構築を検討していきます。 今後は、2021年2月に設立した小野薬品ヘルスケア株式会社、2022年3月に設立した小野デジタルヘルス投資合同会社、そして2022 年11月に設立した株式会社michitekuにおいて、新規ヘルスケア事業、DXファンド、ヘルスケア分野での情報処理・情報提供サービス事業など、事業領域拡大に向けた投資も行う予定であり、海外開発拠点・販売網の拡充、企業基盤強化とあわせて2022年度からの5 年間で300 億~500 億円の投資を計画しています。
資本コストと資本収益性
資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、以下の通り取り組んでいます。
資本コストの把握
当社では資本コストとして、「株主資本コスト」を把握しています。
分析・評価
当社では株主資本コストをROEと比較し、継続して資本収益性を確保できていることを確認しています。
また、市場の評価指標であるPBRなども注視しており、一定の市場評価が得られていることを確認しています。
なお、これらの内容については、取締役会において分析・評価がなされています。
継続的な取組み
今後も資本コストや市場の評価を意識した経営を推進し、積極的な開示および投資家との対話に努めていきます。なお、具体的な取り組みなどについては、当社コーポレートレポートにて開示しています。
コーポレートレポート(マテリアリティ7 財務資本の強化)
各種関連指標(実績)
*税引後%
指標 |
2018年度 |
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
|
---|---|---|---|---|---|---|
資本コスト |
株主資本コスト* |
6%程度を想定(CAPMベース) |
||||
資本収益性 |
ROE |
9.5% |
10.7% |
12.6% |
12.5% |
16.1% |
市場評価 |
PBR |
2.00倍 |
2.21倍 |
2.27倍 |
2.28倍 |
1.82倍 |