2024.12.23
研究開発

米国食品医薬品局(FDA)が、BRAFV600E 遺伝子変異を有する進行・再発の結腸・直腸がんのファーストライン治療としてPfizerのビラフトビ®の併用療法を承認

 本資料は、小野薬品工業株式会社 (以下「小野薬品」)がライセンス契約を締結しているPfizer Inc.が2024年12月20日(米国現地時間)に発表した英語原文のプレスリリースを和文抄訳として提供するものです。和文抄訳の内容につきましては、英語原文が優先されます。英語原文のプレスリリースは、以下のリンクをご覧ください。
https://www.pfizer.com/newsroom/press-releases

 なお、日本においては、2024年12月12日に小野薬品が、BRAF阻害剤であるビラフトビ® (一般名:エンコラフェニブ)について、抗ヒトEGFRモノクローナル抗体であるセツキシマブと化学療法の併用療法による「BRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」に対する効能又は効果に係る製造販売承認事項一部変更承認申請を行っています。

本資料は、小野薬品がライセンス契約している米国ファイザー社が2024年12月20日(米国現地時間)に発表しましたプレスリリースの和文抄訳であり、内容につきましては英語原文が優先されます。

米国食品医薬品局(FDA)が、 BRAFV600E 遺伝子変異を有する進行・再発の
結腸・直腸がんのファーストライン治療としてPfizerの ビラフトビ® 併用療法を承認

  • ビラフトビとセツキシマブおよび mFOLFOX6の併用療法は、BRAFV600E 遺伝子変異を有する進行・再発の結腸・直腸がん患者のファーストライン治療として承認された最初で唯一の標的治療の併用レジメンです。
  • このたびの迅速承認は、40%の奏効率であった対照群との比較において61%の奏効率を示した第III相BREAKWATER試験データに基づいています。

 (ニューヨーク州ニューヨーク、2024年12月20日)- Pfizer Inc.(NYSE:PFE、以下、Pfizer社)は、本日、米国食品医薬品局(FDA)が、FDAが承認した検査法で検出されたBRAFV600E 遺伝子変異を有する進行・再発の結腸・直腸がん(CRC)患者の一次治療として、ビラフトビ®(一般名:エンコラフェニブ)とセツキシマブ(ERBITUX®の製品名で販売)およびmFOLFOX6(フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン)との併用療法について承認したことを発表しました 1。この適応症は、治療歴のない患者を対象とした第III相BREAKWATER試験において、ビラフトビとセツキシマブおよびmFOLFOX6の併用療法によって奏効率と奏効持続期間で統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善が示されたことに基づいて承認されました。この適応症の承認が継続されるためには、臨床的有用性が検証されることが条件となります。今回の迅速承認は、進行性または再発性のがんに対する新たな治療薬の開発と承認を支援することを目的とした FDA の Project Front Runner のもとで実施される業界初の承認の一つです。

 テキサス州立大学 MDアンダーソンがんセンター、消化器腫瘍内科の教授兼副部長であり、BREAKWATER試験の共同主任研究者でもあるScott Kopetz(M.D.、Ph.D.、FACP)は、次のように述べています。「これまでBRAF遺伝子変異を有する進行・再発の結腸・直腸がんと診断された患者さんの治療選択肢は限られており、予後は不良でした。この患者集団に対してファーストライン治療として使用可能なBRAF標的療法を特徴とする最初で唯一の併用療法としてエンコラフェニブを用いたレジメンは、速やかで持続的な高い奏効率を示しました。これにより、持続的な疾患治療が可能になることを示しており、患者さんに新たな希望をもたらします。」

 現在進行中の BREAKWATER 試験は、BRAFV600E 遺伝子変異を有し、前治療歴のない進行・再発の結腸・直腸がん患者を対象に、ビラフトビとセツキシマブおよび化学療法(mFOLFOX6)との併用もしくは非併用を評価するものです。この試験は、BRAFV600E 遺伝子変異を有する進行・再発の結腸・直腸がんのファーストライン治療としてBRAF標的治療レジメンを評価する唯一の第III相試験になります。この試験では、2つの主要評価項目のうちの一つである奏効率(ORR)について、ベバシズマブの併用もしくは非併用の標準化学療法群が40% (95%信頼区間: 31 - 49)であったのに対して、ビラフトビとセツキシマブおよびmFOLFOX6の併用群は61% (95%信頼区間: 52 - 70)で臨床的に有意な改善を示しました(p=0.0008)1。奏効期間(DoR)の中央値は、ベバシズマブの併用もしくは非併用の標準化学療法群では11.1カ月(95%信頼区間:6.7 - 12.7)であったのに対し、ビラフトビの併用療法は13.9カ月(95%信頼区間:8.5 - 推定不能)でした 1。BREAKWATER第III相試験は現在進行中でおり、全データセットから得られる解析結果が近日開催される学会で発表されます。

 Pfizer社のエグゼクティブ・バイス・プレジデントであるオンコロジー開発担当責任者(Chief Oncology Officer)のChris Boshoff(M.D. 、Ph.D.)は次のように述べています。「Pfizer社は10年以上にわたり、分子標的がん治療薬開発のパイオニアとなってきましたが、本日のビラフトビ 併用療法の迅速承認によって、BRAFV600E 遺伝子変異を有する進行・再発の結腸・直腸がん患者さんは、このがんを引き起こす遺伝子変異を特異的に標的とする治療薬を含むファーストライン治療の選択肢を手にすることになります。この成果は、治療が最も困難ながんのひとつであるBRAF 遺伝子変異を有するがんを対象として画期的な治療薬の開発を進めてきた当社の新たな功績となるものです。脳関門を透過する次世代のBRAF阻害薬の創薬と開発を含めて、当社は今後もポートフォリオの拡充を続けてまいります。」

 BREAKWATER 試験におけるビラフトビとセツキシマブおよびmFOLFOX6の併用療法の安全性プロファイルは、これまでに各薬剤で報告されている安全性プロファイルと一貫していました。新たな安全性のシグナルは認められませんでした。報告された主な副作用(25%以上)は、末梢神経障害、悪心、疲労、発疹、貧血、下痢、食欲減退、嘔吐、出血、腹痛および発熱でした 1。ビラフトビとセツキシマブおよびmFOLFOX6併用投与群の12% が、ビラフトビの永続的な投薬中止に至る副作用を経験し、報告された主な副作用(1%以上)には、リパーゼ値上昇が含まれていました。

 Colorectal Cancer Allianceのチーフ・エグゼクティブ・オフィサーであるMichael Sapienzaは次のように述べています。「がんの進行・再発の発覚は、結腸・直腸がん患者さんとその家族にとって脅威に感じる瞬間です。進行・再発の結腸・直腸がんと診断された患者さんの予後は近年わずかに改善しましたが、BRAF遺伝子変異を有する場合はそうとは言えず、こうした患者さんは残念ながら急激な病勢進行や予後不良に見舞われています。本日、BRAFV600E 遺伝子変異を有する結腸・直腸がんを対象として、治療歴のない患者さんに使用できるBRAF標的治療薬を含む初めての併用療法が承認されました。これによって、これらの患者集団に新たな希望をもたらすとともに、この疾患を根絶するという私たち全員の使命の実現に向けた大きな一歩となります。」

 本申請は FDA によって優先審査に指定され、Real-Time Oncology Review (RTOR) パイロットプログラムを用いて、FDAの Project Orbis に基づき審査されました。カナダとブラジルを含むProject Orbis参加国の間で、並行して本申請の審査が進められています。同じ適応症でビラフトビ併用療法の追加承認を将来的に申請できるよう、他の国の規制当局とも BREAKWATER試験のデータについて協議を行っています。今回の迅速承認は、治療歴を有する、BRAFV600E遺伝子変異を有する進行・再発の結腸・直腸がんの成人患者の治療薬としてのビラフトビとセツキシマブの併用療法のFDAによる承認に続くものです。

結腸・直腸がん(CRC)について

 CRC は、世界で3番目に多いタイプのがんであり、2022年には約180万人が新たに診断されています 2。男性の約23人に1人、女性の約25人に1人が、一生のうちにCRCを発症するリスクがあります 3。米国だけで、2024年に推定152,810人が結腸または直腸がんと診断され、毎年約53,000人が亡くなられていると推定されています 4。CRCと診断された患者の20%に転移が認められ、治療を困難にしています 5
 BRAF 遺伝子変異は、進行・再発のCRC患者の 8~10%に発症すると推定されており、これらの患者の予後は不良です 6。BRAFV600E 遺伝子変異は最も多いBRAF 変異で、BRAFV600E 遺伝子変異を有するCRC患者の死亡リスクは、遺伝子変異がない患者の2倍以上です 7。BRAFV600E 遺伝子変異を有する進行・再発のCRCは、大きなアンメットニーズが残された領域であるにもかかわらず、これまで、前治療歴のないBRAFV600E 遺伝子変異を有する進行・再発のCRCを適応とする、バイオマーカーに基づく治療薬は承認されていませんでした 8, 9

BREAKWATER試験について

 BREAKWATER試験は、前治療歴がないBRAFV600E 遺伝子変異を有する進行・再発の結腸・直腸がん患者を対象に、化学療法との併用と非併用の場合を含むビラフトビとセツキシマブの併用療法を評価した多施設無作為化実薬対照非盲検第III相試験です。第III相試験において患者は、ビラフトビ 300 mg 1日1回経口投与とセツキシマブ併用(158例を無作為化後に中止)、ビラフトビ300 mg 1日1回経口投与とセツキシマブおよびmFOLFOX6 の併用(n=236)、ベバシズマブの併用もしくは非併用のmFOLFOX6、FOLFOXIRIまたはCAPOX投与(対照群)(n=243)に割りつけられました。
 2つの主要評価項目は、盲検下独立中央判定(BICR)で評価されたORRおよび無増悪生存期間(PFS)でした。主要な副次評価項目には、BICRで評価された奏効期間(DoR)、BICRに基づく奏効までの期間、全生存期間、安全性が含まれます。

ビラフトビ® (エンコラフェニブ)について

 ビラフトビは、BRAFV600E 変異を標的とする経口低分子キナーゼ阻害剤です。CRCを含む一部のがんにおいては、MAPKシグナル伝達経路(RAS-RAF-MEK-ERK)におけるタンパク質の不適切な活性化が生じることが示されています。

 Pfizer社は、米国、カナダ、南米、中東、アフリカにおけるビラフトビの独占的権利を保有しています。小野薬品は日本および韓国で同剤を商業化する独占的権利を、Medison社がイスラエルで同剤を商業化する独占的権利を、Pierre Fabre 社が欧州およびアジア(日本および韓国を除く)を含む他のすべての国において同剤を商業化する独占的権利を保有しています。

ビラフトビの適応症および重要な安全性情報について

 米国でのビラフトビの適応症および重要な安全性情報については、英語原文のリリースをご参照ください。

Pfizer社オンコロジーについて

 Pfizer 社オンコロジーは、がん治療の新時代の最前線に立っています。業界をリードする当社のポートフォリオと幅広いパイプラインには、低分子、抗体薬物複合体(ADC)、二重特異性抗体(その他のがん免疫療法生物製剤も含む)など様々な角度からがんを攻撃する3種類の作用機序が含まれます。Pfizer 社オンコロジーは、乳がん、泌尿生殖器がん、血液がん、肺がんを含む胸部がんなど、世界で最も多く見られるがん種を対象に革新的な治療薬の提供に力を注いでいます。サイエンスを活用して、Pfizer社オンコロジーは、がん患者さんの生活を改善し寿命を伸ばすブレークスルーを生み出すべく取り組んでいます。

Pfizer社:患者さんの生活を大きく変えるブレークスルーを生みだす

 Pfizer社はサイエンスとグローバルなリソースを活用し、人々が健康で長生きし、生活を大きく改善するための治療法をお届けしています。私たちは、画期的な医薬品やワクチンをはじめ、ヘルスケア製品の探索、開発および製造における品質、安全性および価値の基準設定に取り組んでいます。日々、Pfizer社の社員は、現代の最も恐れられている疾患に挑むべく、健康、予防、治療および治癒を促進するため、先進国および新興国市場で貢献しています。世界最高クラスの革新的なバイオ医薬品企業の責務として、世界中で信頼でき、容易に入手できるヘルスケアへのアクセスを支援し、拡張できるように医療従事者、政府、地域社会と協力しています。175年にわたり、Pfizer社は私たちに信頼を寄せてくださる皆様のために、前進を続けてきました。私たちは、定期的に投資家にとって重要と思われる情報をウェブサイト( www.pfizer.com )に投稿しています。詳細については、www.pfizer.com をご覧いただくか、@Pfizer と @Pfizer_News でX、LinkedIn 、YouTube および Facebook.com/Pfizer でFacebookをご覧ください。

参考文献

  1. BRAFTOVI® (encorafenib) Prescribing Information placeholder.
  2. American Cancer Society. Global Cancer Facts & Figures 5th Edition. Available at: https://www.cancer.org/content/dam/cancer-org/research/cancer-facts-and-statistics/global-cancer-facts-and-figures/global-cancer-facts-and-figures-2024.pdf . Last accessed: September 2024.
  3. American Cancer Society. Key Statistics for Colorectal Cancer. Available at: https://www.cancer.org/cancer/types/colon-rectal-cancer/about/key-statistics.html . Last accessed: September 2024.
  4. American Cancer Society. Cancer Facts & Figures 2024. Available at: https://www.cancer.org/content/dam/cancer-org/research/cancer-facts-and-statistics/annual-cancer-facts-and-figures/2024/2024-cancer-facts-and-figures-acs.pdf . Last accessed: September 2024.
  5. Ciardiello F, Ciardiello D, Martini G, et al. Clinical management of metastatic colorectal cancer in the era of precision medicine. CA Cancer J Clin. 2022;72:372–40.
  6. Djanani A, Eller S, Öfner D, et al. The role of BRAF in metastatic colorectal carcinoma-past, present, and future. Int J Mol Sci. 2020;21(23):9001.
  7. Safaee Ardekani G, Jafarnejad SM, Tan L, et al. The prognostic value of BRAF mutation in colorectal cancer and melanoma: a systematic review and meta-analysis. PloS ONE. 2012;7(10):e47054.
  8. NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®) for Colon Cancer. V.4.2024 © National Comprehensive Cancer Network, Inc. 2024. All rights reserved. Accessed September 2, 2024. To view the most recent and complete version of the guideline, go online to NCCN.org.
  9. Cervantes A, Adam R, Roselló S, et al. Metastatic colorectal cancer: ESMO Clinical Practice Guideline for diagnosis, treatment and follow-up. Ann Oncol. 2023;34(1):10–32.