2024.09.12
研究開発

オプジーボとヤーボイの併用療法、「治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」に対する効能又は効果の追加に係る一部変更承認申請

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:滝野 十一、以下「小野薬品」)とブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:スティーブ・スギノ、以下「BMSKK」)は、本日、小野薬品の抗PD-1抗体「オプジーボ®(一般名:ニボルマブ)点滴静注」(以下、オプジーボ)とBMSKKの抗CTLA-4抗体「ヤーボイ®(一般名:イピリムマブ)点滴静注液」(以下、ヤーボイ)との併用療法について、「治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」に対する効能又は効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認申請を行いましたので、お知らせします。

 今回の承認申請は、治癒切除不能な進行・再発のMSI-Highまたはミスマッチ修復欠損(dMMR)を有する結腸・直腸がん患者を対象に、オプジーボとヤーボイの併用療法を治験医師が選択する化学療法*と比較評価した国際共同第Ⅲ相臨床試験であるCheckMate -8HW試験(CA209-8HW:ONO-4538-87)の結果に基づいています。本試験において、予め計画された中間解析で2つの主要評価項目のうちの1つである、中央判定でMSI-HighまたはdMMRであることが確認された患者のうち治療歴のない患者における盲検下独立中央評価委員会(BICR)の評価による無増悪生存期間(PFS)で、オプジーボとヤーボイの併用療法群は化学療法群と比較して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示しました。本試験におけるオプジーボとヤーボイの併用療法の安全性プロファイルは、これまでに報告されているものと一貫しており、新たな安全性シグナルは認められませんでした。
 本試験は、もう1つの主要評価項目である、全治療ラインの患者において、オプジーボとヤーボイの併用療法群とオプジーボ単剤療法群をPFSで比較評価するため進行中です。

mFOLFOX6(5-FU・ホリナート・オキサリプラチン療法)、mFOLFOX6とベバシズマブもしくはセツキシマブとの併用療法、FOLFIRI(5-FU・ホリナート・イリノテカン療法)、またはFOLFIRIとベバシズマブもしくはセツキシマブとの併用療法

 結腸・直腸がんの適応症に関しては、2020年2月にオプジーボ単剤療法および2020年9月にオプジーボとヤーボイの併用療法で「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」の効能又は効果で承認されています。今回の申請により、オプジーボとヤーボイの併用療法による一次治療への適応拡大の可能性が期待されます。

CheckMate -8HW試験(CA209-8HW:ONO-4538-87)について

 本試験は、治癒切除不能な進行・再発のMSI-HighまたはdMMRを有する結腸・直腸がん患者を対象にオプジーボとヤーボイの併用療法をオプジーボ単剤療法または治験医師が選択する化学療法(mFOLFOX6もしくはFOLFIRI、および各々とベバシズマブもしくはセツキシマブとの併用療法)と比較評価した国際共同無作為化非盲検第Ⅲ相臨床試験です。
 本試験では、患者約830例がオプジーボとヤーボイの併用療法群(オプジーボ240 mgおよびヤーボイ1 mg/kgが3週間間隔で計4回投与され、その後オプジーボ480 mgが4週間間隔で投与)、オプジーボ単剤療法群(オプジーボ240 mgが2週間間隔で計6回投与され、その後オプジーボ480 mgが4週間間隔で投与)、または治験医師が選択する化学療法群のいずれかに無作為に割り付けられました。患者への投与は、病勢進行または忍容できない毒性の発現が認められるまで継続されました。本試験の2つの主要評価項目は、中央判定でMSI-HighまたはdMMRであることが確認された患者のうち治療歴のない患者において、治験医師が選択する化学療法群と比較したオプジーボとヤーボイの併用療法群の盲検下独立中央評価委員会(BICR)の評価によるPFS、および全治療ラインの患者において、オプジーボ単剤療法群と比較したオプジーボとヤーボイの併用療法群のBICRの評価によるPFSです。

結腸・直腸がんについて

 結腸・直腸がんは、全世界における年間新規発症患者数が約192.6万人と3番目に多いがん腫であり、年間約90.4万人の死亡が報告されています*1。日本では、年間新規発症患者数が約14.5万人と1番多く、年間約6.0万人の死亡が報告されています*1
 MSI-HighまたはdMMRを有する結腸・直腸がんは、治癒切除不能な結腸・直腸がんの約5%に認められます。治癒切除不能な進行・再発のMSI-HighまたはdMMRを有する結腸・直腸がんにおいて、従来の化学療法による治療効果は十分ではなく、新規治療薬の開発が期待されています*2

  1. Globocan 2022. Available at : https://gco.iarc.fr/today/en/fact-sheets-populations
  2. 大腸癌研究会、大腸癌治療ガイドライン 医師用 2022年版

オプジーボについて

 オプジーボは、programmed cell death-1(PD-1)とPD-1リガンドの経路を阻害することで身体の免疫系を利用して抗腫瘍免疫応答を再活性化するPD-1免疫チェックポイント阻害薬です。がんを攻撃するために身体の免疫系を利用するオプジーボは、日本で2014年7月に悪性黒色腫で承認を取得以降、複数のがん腫において重要な治療選択肢となっています。現在、日本、韓国、台湾、米国およびEUを含む65カ国以上で承認されています。
 日本では、小野薬品が2014年7月に「根治切除不能な悪性黒色腫」の効能又は効果で承認を取得し、2014年9月に同適応症で発売しました。
 その後、2015年12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」、2016年8月に「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」、2016年12月に「再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫」、2017年3月に「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」、2017年9月に「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌」、2018年8月に「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」、2020年2月に「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」と「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道癌」、2021年12月に「原発不明癌」、2022年3月に「尿路上皮癌における術後補助療法」、2023年11月に「悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫を除く)」、および2024年2月に「根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍」の効能又は効果の追加承認を取得しました。
 また、肝細胞癌について、効能又は効果の追加の承認申請中です。

ヤーボイについて

 ヤーボイは、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)に結合する遺伝子組換えヒトモノクローナル抗体です。CTLA-4は、T細胞の活性化を抑制する調節因子です。ヤーボイはCTLA-4と結合し、CTLA-4とそのリガンドであるCD80/CD86との相互作用を阻害します。CTLA-4が阻害されると、腫瘍浸潤エフェクターT細胞の活性化と増殖などの、T細胞の活性化と増殖が促されることが明らかになっています。また、CTLA-4のシグナル伝達が阻害されると、制御性T細胞の機能が低下し、抗腫瘍免疫応答を含むT細胞の反応性が全体的に向上する可能性があります。
 2011年3月25日、米国食品医薬品局(FDA)は切除不能または転移性悪性黒色腫を適応として、ヤーボイ3 mg/kg単剤療法を承認しました。現在、ヤーボイは切除不能または転移性悪性黒色腫の治療薬として50カ国以上で承認されています。ヤーボイに関しては、複数のがん腫で、幅広い開発プログラムが進められています。日本においては、2015年7月に、根治切除不能な悪性黒色腫を適応とする製造販売承認を取得しました。

小野薬品工業株式会社とブリストル マイヤーズ スクイブの提携について

 2011年、小野薬品は、ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)と締結した提携契約により、当時、小野薬品がオプジーボに関するすべての権利を保有していた北米以外の地域のうち、日本、韓国、台湾を除く世界各国におけるオプジーボの開発・商業化に関する権利を供与しました。2014年7月、小野薬品とBMSは、この戦略的提携契約をさらに拡張し、日本、韓国、台湾のがん患者さん向けに複数の免疫療法薬を単剤療法および併用療法として共同開発・商業化することを合意しました。