2024.08.09
研究開発

オプジーボとヤーボイの併用療法、「切除不能な肝細胞癌」に対する効能又は効果の追加に係る一部変更承認申請

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:滝野 十一、以下「小野薬品」)とブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:スティーブ・スギノ、以下「BMSKK」)は、本日、小野薬品の抗PD-1抗体「オプジーボ®(一般名:ニボルマブ)点滴静注」(以下、オプジーボ)とBMSKKの抗CTLA-4抗体「ヤーボイ®(一般名:イピリムマブ)点滴静注液」(以下、ヤーボイ)の併用療法について、「切除不能な肝細胞癌」に対する効能又は効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認申請を行いましたので、お知らせします。

 今回の承認申請は、全身療法による治療歴のない切除不能な肝細胞がん患者を対象に、オプジーボとヤーボイの併用療法を治験担当医師が選択したレンバチニブまたはソラフェニブの単剤療法と比較評価した国際共同第Ⅲ相臨床試験であるCheckMate -9DW試験(CA209-9DW:ONO-4538-92)の中間解析の結果に基づいています。本解析において、オプジーボとヤーボイの併用療法は、レンバチニブまたはソラフェニブの単剤療法と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS)で統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示し、主要評価項目を達成しました。本試験におけるオプジーボとヤーボイの併用療法の安全性プロファイルは、本併用療法でこれまでに報告されているものと一貫しており、新たな安全性シグナルは認められませんでした。

CheckMate -9DW試験(CA209-9DW:ONO-4538-92)について

 CheckMate -9DW試験は、全身療法による治療歴のない切除不能な肝細胞がん患者を対象に、オプジーボとヤーボイの併用療法を治験担当医師が選択したレンバチニブまたはソラフェニブの単剤療法と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第Ⅲ相臨床試験です。
 患者668例が、オプジーボとヤーボイの併用療法群(オプジーボ1 mg/kgとヤーボイ3 mg/kgを3週間間隔で4回投与し、その後オプジーボ480 mgを4週間間隔で投与)、レンバチニブまたはソラフェニブ単剤を経口投与する対照群のいずれかに無作為に割り付けられました。本試験の主要評価項目は全生存期間(OS)です。主な副次評価項目は、奏効率(ORR)および症状悪化までの期間(TTSD)です。

肝細胞がんについて

 肝がんは、世界のがんによる死因で3番目に多いがんで、2022年に肝がんの新規罹患者数は約86.6万人と推定され、約75.8万人が亡くなったと推定されています1) 。日本では、2022年に年間新規罹患者数が約4.1万人と推定され、年間約2.6万人が亡くなったと推定されています1) 。肝細胞がん(HCC)は、原発性肝がんの最も一般的な型で肝がん全体の90%を占めます2) 。HCCは進行期に診断されることが多く、進行期では効果的な治療選択肢が限られ多くは予後が不良です。
 患者の約70%が5年以内に再発を経験し、特に切除またはアブレーション後でも再発リスクは依然として高いと考えられています3) 。HCCの大半は、B型肝炎ウイルス(HBV)またはC型肝炎ウイルス(HCV)感染に起因していますが、メタボリックシンドロームおよび非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の有病率が高まっており、HCCの罹患率の上昇の一因になると推定されています。

  1. Globocan 2022: Available at: https://gco.iarc.fr/today/en/fact-sheets-populations#countries
  2. Kim E, Viatour P. Hepatocellular carcinoma: old friends and new tricks. Exp Mol Med. 2020; 52: 1898–07.
  3. Forner A, Reig M, Bruix J. Hepatocellular carcinoma. Lancet. 2018; 391: 1301–14.

オプジーボについて

 オプジーボは、programmed cell death-1(PD-1)とPD-1リガンドの経路を阻害することで身体の免疫系を利用して抗腫瘍免疫応答を再活性化するPD-1免疫チェックポイント阻害薬です。がんを攻撃するために身体の免疫系を利用するオプジーボは、日本で2014年7月に悪性黒色腫で承認を取得以降、複数のがん腫において重要な治療選択肢となっています。現在、日本、韓国、台湾、米国およびEUを含む65カ国以上で承認されています。
 日本では、小野薬品が2014年7月に「根治切除不能な悪性黒色腫」の効能又は効果で承認を取得し、2014年9月に同適応症で発売しました。
 その後、2015年12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」、2016年8月に「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」、2016年12月に「再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫」、2017年3月に「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」、2017年9月に「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌」、2018年8月に「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」、2020年2月に「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」と「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道癌」、2021年12月に「原発不明癌」、2022年3月に「尿路上皮癌における術後補助療法」、2023年11月に「悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫を除く)」、および2024年2月に「根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍」の効能又は効果の承認を取得しました。
 また、肝細胞がん等を対象とした臨床試験も実施中です。

ヤーボイについて

 ヤーボイは、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)に結合する遺伝子組換えヒトモノクローナル抗体です。CTLA-4は、T細胞の活性化を抑制する調節因子です。ヤーボイはCTLA-4と結合し、CTLA-4とそのリガンドであるCD80/CD86との相互作用を阻害します。CTLA-4が阻害されると、腫瘍浸潤エフェクターT細胞の活性化と増殖など、T細胞の活性化と増殖が促されることが明らかになっています。また、CTLA-4のシグナル伝達が阻害されると、制御性T細胞の機能が低下し、抗腫瘍免疫応答を含むT細胞の反応性が全体的に向上する可能性があります。
 2011年3月25日、米国食品医薬品局(FDA)は、切除不能または転移性悪性黒色腫を適応として、ヤーボイ3 mg/kg単剤療法を承認しました。現在、ヤーボイは切除不能または転移性悪性黒色腫の治療薬として50カ国以上で承認されています。ヤーボイに関しては、複数のがん腫で、幅広い開発プログラムが進められています。日本においては、2015年7月に、根治切除不能な悪性黒色腫を適応とする製造販売承認を取得しました。

小野薬品工業株式会社とブリストル マイヤーズ スクイブの提携について

 2011年、小野薬品は、ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)と締結した提携契約により、当時、小野薬品がオプジーボに関するすべての権利を保有していた北米以外の地域のうち、日本、韓国、台湾を除く世界各国におけるオプジーボの開発・商業化に関する権利を供与しました。2014年7月、小野薬品とBMSは、この戦略的提携契約をさらに拡張し、日本、韓国、台湾のがん患者さん向けに複数の免疫療法薬を単独療法および併用療法として共同開発・商業化することを合意しました。