2024.07.19
研究開発

欧州医薬品庁が、腱滑膜巨細胞腫患者を対象としたDeciphera社によるvimseltinibの販売承認申請を受理

- 今回の申請は、vimseltinibがプラセボと比較して、奏効率において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した
第3相MOTION試験の結果に基づいています。 -

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:滝野 十一、以下「当社」)は、本日、欧州医薬品庁(EMA)が、当社の完全子会社であるDeciphera Pharmaceuticals, Inc.(米国マサチューセッツ州、以下「Deciphera社」)が開発中のコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)阻害剤であるvimseltinibについて、腱滑膜巨細胞腫(TGCT)患者の治療に対する販売承認申請(MAA)を受理したことをお知らせします。このMAAの承認審査は、欧州連合(EU)の全27加盟国をはじめ、アイスランド、リヒテンシュタインおよびノルウェーにおいてEMAによる中央審査の下に開始されます。Vimseltinibは、2019年12月にEMAよりTGCTの適応症でオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)に指定されています。

 Deciphera社の社長兼CEOであるSteven Hoerterは、次のように述べています。「ピボタルな第3相臨床試験であるMOTION試験の肯定的な結果に基づき、EUにおいて規制当局による承認審査が開始されることをうれしく思います。これにより、有効で忍容性が高い治療を必要とされているTGCT患者さんにvimseltinibをお届けするという私たちの使命に一歩近づくことができました。」

 今回の申請は、抗CSF1/CSF1R療法による治療歴がなく(イマチニブまたはニロチニブによる治療は許容)、手術不適応のTGCT患者を対象にvimseltinibの有効性および安全性をプラセボと比較評価するピボタルな第3相臨床試験であるMOTION試験の結果に基づいています。本試験において、vimseltinibは、プラセボと比較して、主要評価項目であるintent-to-treat(ITT)集団における固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST v1.1)を用いた盲検独立放射線評価委員会(BIRR)の評価による25週時の奏効率(ORR)で、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました(vimseltinib群40% vs プラセボ群0%、p<0.0001)。またvimseltinibは、プラセボと比較して、すべての重要な副次評価項目においても、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました。本試験におけるvimseltinibの安全性プロファイルは、管理可能であり、第Ⅰ/Ⅱ相試験でこれまでに報告されたものと一貫していました。MOTION試験の結果は、2024年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会 で発表されました。

*:Gelberblom, et at. 2024 ASCO Annual Meeting

MOTION試験について

 MOTION試験は、抗CSF1/CSF1R療法による治療歴がなく(イマチニブまたはニロチニブによる治療は許容)、手術不適応のTGCT患者を対象にvimseltinibの有効性および安全性をプラセボと比較評価する無作為化二重盲検プラセボ対照第3相臨床試験です。本試験の主要評価項目は、intent-to-treat(ITT)集団における固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST v1.1)を用いた盲検独立放射線評価委員会(BIRR)の評価による25週時の奏効率(ORR)です。副次評価項目は、いずれも25週時に評価した腫瘍体積スコア(TVS)によるORR、関節可動域(ROM)、身体機能、強張り、生活の質および疼痛です。
 本試験は2つのPartで構成されています。Part 1では、患者はvimseltinibまたはプラセボのいずれかに割付けられ、24週間投与を受けます。Part 2では、Part 1でプラセボに割付けられた患者はvimseltinibの投与を受けるオプションがあり、すべての患者が非盲検下でvimseltinibの長期投与を受けます。

腱滑膜巨細胞腫(TGCT)について

 腱滑膜巨細胞腫(TGCT)は、コロニー刺激因子1(CSF1)遺伝子の転座によって、CSF-1の過剰発現とCSF1受容体陽性炎症細胞の病変への集積により引き起こされる希な疾患です。TGCTは、関節の内側または近位に発生する希な非悪性腫瘍です。TGCTはCSF1遺伝子の調節異常によって引き起こされ、CSF1の過剰産生につながります。TGCTは、従来、腱鞘巨細胞腫(GCT-TS)または色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)として知られていたびまん型のTGCTです。
 これらの腫瘍は良性ですが、増殖して周囲の組織や構造に損傷を与え、関節の痛み、腫れ、身体機能の低下、可動域の制限などを引き起こすことがあります。手術が主な治療選択肢ですが、特にびまん型のTGCTではこれらの腫瘍が再発する傾向があります。治療を行わなかった場合、または腫瘍が継続的に再発すると、影響を受けた関節および周囲の組織に損傷と変性が生じ、重大な障害を引き起こすことがあります。手術不適応の患者さんに対して全身治療の選択肢は限られており、TGCTに対する新たな治療選択肢が必要とされています。

Vimseltinibについて

 Vimseltinibは、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)を選択的にかつ強力に阻害するよう特別に設計されたスイッチコントロールキナーゼ阻害剤です。VimseltinibはDeciphera社独自のスイッチコントロールキナーゼ阻害剤プラットフォームを使用して創製されています。

Deciphera Pharmaceuticals Inc.について

(2024年6月11日に、Deciphera社は小野薬品工業株式会社の完全子会社となりました。)
 Deciphera社は、がん患者さんの生活を改善するための重要な新薬の開発、商業化に注力しています。Deciphera社独自のスイッチコントロールキナーゼ阻害剤プラットフォームとキナーゼ生物学の深い専門知識を活用して、革新的な医薬品の幅広いポートフォリオを開発しています。Deciphera社は臨床試験段階のプラットフォームから複数の製品候補の開発を進めており、その中でスイッチコントロール阻害薬であるQINLOCK®は消化管間質腫瘍(GIST)の四次治療薬として、欧州連合および米国を初め複数の国々で承認されています。詳細については、https://www.deciphera.com/ をご覧いただくか、LinkedInおよびX(@Deciphera)でフォローしてください。