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COOメッセージ

多様な知識を集結してグローバル展開とパイプライン
拡充を加速し、
次の成長につなげていきます。

代表取締役社長COO
滝野 十一

300年の歴史を引き継ぎ、オプジーボの成功を次の成長へつなげていく

2024年4月、社長COOに就任した滝野です。小野薬品が創業300年を超え、先人たちが長く紡いできた歴史を引き継ぎ、さらに世界という大きな舞台へ羽ばたかんとしているとき、社長という大役をいただいたことに、身の引き締まる思いです。オプジーボという業界を代表する製品を生み出す機会に恵まれ、その幸運の中で拡大してきた流れを、次の成長へつなげていきたいと強く決意しています。

当社は、ともすれば、オプジーボの特許切れが控えていることや、次の製品をどう生み出し、収益を確保していくのかという課題に視線が注がれがちです。実際、私たちはその壁を乗り越えようと緊張感をもって仕事に取り組んでいますが、それは見方を変えるとオプジーボの成功によりさらに大きな成長の機会を得ているとも言えます。オプジーボの成功を礎として、次の成長に向けてさまざまな準備や打ち手を創意工夫しながら取り組んでおり、当社は今、実にやりがいがあり、意気に感じて仕事ができる時期にあると考えています。

新体制のもとビジネスモデルの一大変革を強力に推進

相良会長の陣頭指揮のもと進めてきた15年間の中期経営計画がちょうど折り返しを迎えました。現在、どのようなフェーズにあるかと言うとドメスティック市場を中心に、かつ海外はパートナリングを軸としてきたビジネスモデルから、欧米自販の事業へのトランスフォーメーションを進めている段階にあります。以前は、体力不足で挑戦すること自体ができませんでしたが、ようやくこのビジネスモデル変革に取り組めるまでに会社が成長できたのだと捉えています。

また、同業他社に対して後手に回ったことがベネフィットになっている部分もあります。これまで、他社のグローバル展開の経緯をずっと見てきて感じたことは、海外には1品だけではなく、複数の製品候補を持って出ていくことの重要性が、ますます明確になっているということです。このことは、我々が現在、欧米展開を進める上で参考になっています。つまり、二の手、三の手を同時に充実させておくことも必要で、これらの施策を並行して進めていくには、今回の代表取締役3人体制が非常にフィットしていると考えます。今は、成長戦略の欧米自販を力強く推進していくための体制へとシフトを図っている段階だと言えるでしょう。

「二の手、三の手」の充実を目指して

2024年6月に買収を完了した米国のバイオ医薬品企業Deciphera Pharmaceuticals社(以下、Deciphera社)を評価した点も、二の手、三の手の充実という点にあります。1品だけの獲得ではなく、承認申請の準備段階にある2品目も見えていること、開発の早期段階の化合物も複数有していることなどが大きな理由となりました。

当社のグローバル開発における製品候補は、日本で製品化をしているONO-4059(ベレキシブル錠)、米国Equillium社からオプション権を獲得しているイトリズマブがあり、そこから少しステージが空くものの、自社創薬からの製品候補群が10プロジェクトほど開発早期段階にあります。そのアンバランスなパイプラインをDeciphera社が持つ製品および製品候補で補っていくとともに、Deciphera社の創薬能力の活用も含め当社グループの研究開発のさらなる加速を図るべく、総力を傾けて取り組んでいる状況です。これらの製品候補群を、一日でも早く、一つでも多く上市(販売)し、複数の製品を欧米で展開することで、より多くの患者さんに新薬を届けることを実現したいと考えています。

経験を活かし、グローバル展開・パイプライン拡充の最大の推進力に

当社が掲げる4つの成長戦略のうち、これまでの経験を活かすという意味でも、私自身もより推進したいと思っているのは、「グローバル展開の推進」と「パイプラインの拡充」です。中でも、グループ会社としてDeciphera社の価値を最大化することに心を砕いていきたいと考えています。現在、取り組んでいるパイプライン拡充もDeciphera社をうまく活用することで、より早くより強力に進めていけると考えています。
競合他社がひしめく中、過去の他社事例も踏まえて考えれば、海外展開は容易なものではないでしょう。しかし、決して悲観的になる必要はありません。当社は、これまでオプジーボで培ってきたオンコロジーのノウハウや、他社とのオープンイノベーションやライセンス提携に関するノウハウなどが、相当に蓄積できています。海外市場でも、当社独自の視点や関係構築を活用しながら、ベンチャー企業やアカデミアと提携することで、当社の存在意義を確立していけると考えています。むしろ、未挑戦の領域をこれから自分たちが手掛けていけるのだと、楽しみに思う気持ちの方が強いです。

「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」が世界に浸透する日を夢見て

国内では近年、「小野薬品さんは社会にインパクトをもたらす事業をされていますね」とか「成長されていますね」と言われることが増え、患者さんに貢献できていると実感する機会が増えています。こうした状況が、今後欧米自販に取り組んでいった先に、現地でも実現することを期待しています。
海外においても革新的な医薬品を創製することで、社会に必要とされる会社として認知される日が来たら、どんなに素晴らしいことでしょう。

そのためには、まず企業理念「病気と苦痛に対する人間の闘いのために〜Dedicated to the Fight against Disease and Pain〜」を、欧米でも実践していきたいと考えています。
研究開発、製造、品質、安全性、メディカル、営業、サプライチェーン、管理機能、ガバナンスなどのすべての機能においてグローバルで活動した結果、日本やアジアはもちろん、欧米を含めた世界中の患者さんに新薬、あるいは新しい治療オプションを届けること、それが実践できているという実感を持てるような状況にしていきたい。そのことが、社員あるいは家族の誇りになるような形につなげられれば理想的だと思います。

“病気と苦痛に対する人間の闘いのために” グローバル展開を加速

社内の多様な力と外部の英知を活用しブレークスルーを生み出す

成長戦略を支えるものは何かというと、最終的には社員一人ひとりであり、それが会社の本質そのものであると考えます。近年、人的資本を重要な無形資産とするのも、その表れでしょう。当社で言えば、パイプラインの充実もグローバル展開も、それを実際に進めていくのは人であり、会社のベクトルを推進していくのも人に尽きます。だからこそ、社員一人ひとりが成長の機会を持てるように、会社がその場をしっかり提供していきたいと考えています。さらに成長した一人ひとりがチームワークを発揮できるよう、組織風土やカルチャーの醸成にも力を注がなくてはなりません。そういう点で、まさに「百年の計は人を植うるに如(し)かず」という言葉を体現した会社でありたいと思います。

私自身、かつて相良会長とともにパイプラインの拡充を目指して世界中の化合物を探し回りましたが、これも会長の指揮とバックアップのもと、会社の全員で取り組んだからこそ果たせたことでした。今は多様性が組織の強さに重要な時代だと言われていますが、多様性とはボトムアップを活かすことであり、凄腕リーダーがひとりで手腕を振るうという時代は変わりつつあるという感覚を私は持っています。というのも、今の時代はさまざまな方面で専門的に発展するあらゆる情報を上手く統合することが重要になってきているからです。さまざまな分野に長けた人たちからアイデアや意見をもらわない限り、薬を創ろうにも創れない時代になっていることを考えると、今の時代のリーダーには、現場や技術を最もよく知る人たちの意見を汲み上げて、そういう人達に活躍してもらえるようにすることが必要だと思います。

また、研究開発は得てして内向きになりがちなので、意識して、外の英知を使っていかなくてはなりません。プロスタグランジンもオプジーボも、オープンイノベーションから生まれており、外部と研究開発に取り組んでいくということが、やはり当社の一番の強みとなっています。その強みをもっともっと駆使しながら、次のイノベーション、あるいは次のブレークスルーを生み出していく土壌は当社にあると確信しています。
今後もそれぞれのフィールドを最もよく知る人たちのアイデアをできるだけ活かしながら、創薬やビジネスにつなげていきたいと思います。

※ 古代中国の書物『管子』が出典。原文は「一年の計は穀を樹(う)うるに如(し)くはなく、十年の計は木を樹うるに如くはなく、終身の計は人を樹うるに如くはなし。」で、生涯の計画を立てるには人を育てるのが最も良いという意味。

ステークホルダーの皆さまへ

まだまだ小野薬品の魅力や見えない努力を伝えきれていない、もっと上手く伝えていけるようになりたいといつも思います。製薬業界は高付加価値産業と言われていますが、その所以は、非財務の価値が高いことにあるのではないかと考えています。つまり、多様な情報やアイデア、知見を高度に統合して積み上げていく個々人のノウハウや能力そのものが非財務価値と言い換えられ、その高さが高付加価値につながっているのではないかということです。当社がこうした非財務価値を積み上げていることを、さらにご理解いただけるよう、広くお伝えしていければと思っています。

そして、当社が社会の皆さまから必要だと思われるような会社であり続けるためには、新たな薬を出し続けていかなければなりません。そのための道のりは容易ではありませんが、当社であれば必ず実現できると思っています。ステークホルダーの皆さまには、新たなステージへ向かう当社の挑戦を見守っていただくとともに、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

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