がん免疫分野で挑み続ける、研究員たちの想い。CROSS TALKがん免疫分野で挑み続ける、研究員たちの想い。CROSS TALK

がん免疫分野において
革新的な治療薬の創製に挑む
研究本部オンコロジー研究センター。

そのリーダーや研究員たちが、
日々どのような想いで研究に取り組み、
チャレンジを続けているのか。

水無瀬(みなせ)研究所(大阪府)と米国を
オンラインで結び、座談会を行いました。

オンコロジー研究センター
センター長
竹田 和彦

2000年入社。探索研究所に所属した後、探索研究提携部に異動し海外のバイオベンチャー企業との創薬提携や、国内外の大学との共同研究を経験。ONO PHARMA USAへの海外赴任を経て、オンコロジー研究センターの前身であるオンコロジー創薬研究部に所属。その後、グループヘッド、部次長を歴任し、2024年4月、センター長に就任。

オンコロジー研究センター
研究提携課
浜崎 亮太

2014年入社。入社から現在に至るまでおよそ10年にわたり、がん領域の研究・開発に携わる。大学への留学を経て、臨床開発職として実際の患者さんを間近に感じる日々を経験。現在は、オンコロジー研究センター研究提携課にて大学との共同研究やバイオテック企業との提携業務に取り組む。

オンコロジー研究センター
第六グループ
寺石 紘司

2003年入社。大学時代に「その薬がなぜ効くのか」というメカニズムを研究してきた経験を活かし、薬理担当者として、さまざまな創薬プロジェクトのモデル構築と評価に携わる。およそ3年にわたる国内留学にて細胞療法の可能性にふれ、現在米国に渡り、Fate Therapeutics社にて創薬研究に取り組む。

SECTION01小野薬品の研究者の想い~患者さんのために、前例にとらわれないチャレンジを~

小野薬品は
「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」
という企業理念を掲げられています。
一般に研究者のみなさんは、
医療現場と遠く、患者さんと接する機会が
あまりないイメージがありますが、
どのような姿勢で研究に臨んでいる
のでしょうか?

竹田

小野薬品の企業理念は、我々の存在価値をそのまま言葉で示していると思います。私たちが所属しているオンコロジー研究センターでも、企業理念にちなんで「がんに対する人間の闘いのために」という行動指針を掲げ、患者さんのことを第一に考えながら研究に取り組んでいます。
たとえ前例のないチャレンジであっても、社内に実績や経験がなくても、「患者さんのためになるかどうか」が最優先される。患者さんが待っているのであれば、たとえ希少な疾患であっても、その挑戦を後押しする。当社の研究員たちは、非常に自由度の高い環境のもとで、それぞれのテーマと向き合っています。

寺石

だからこそ、小野薬品にはチャレンジ精神に溢れた人が多いと感じます。きちんと根拠や筋道を立ててチャレンジしたいことを伝えれば、周りの理解と協力を得ながら、自らがオーナーシップをもって研究を進めていける風土があります。
ともすれば研究員は、実験を繰り返すうちに、標的とするがん細胞を攻撃することのみを目的化してしまう場合もあるかもしれません。しかし私たちには、「患者さんのために」という明確なゴールがあり、患者さんが実際にどのような治療状況に置かれているのか、というところまで目を向けながら研究に取り組んでいます。

浜崎

私は身近な人が病気で苦しむ姿を目の当たりにした経験などから、なぜ人は病気にならなければいけないのか、という疑問を子どもの頃から持ち続けてきました。そんな私にとって「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という小野薬品の企業理念は強く心惹かれるものがあり、「患者さんのために」という気持ちが今も原動力になっています。

「患者さんのために」という想いが
一番にあるからこそ、
新しいチャレンジが
次々と生まれているのですね。

竹田

はい。新しいチャレンジとして、たとえば、30年ほど前まで、当社にはがん領域に取り組んだ実績がありませんでした。しかし、PD-1という分子と出会ったことや、がん領域において未だに解決されない患者さんのニーズ(アンメットメディカルニーズ)があることから、未踏の領域へと一歩踏み出し、新たな挑戦に取り組むことになりました。

寺石

創薬のアプローチについても、小野薬品は前例に囚われない挑戦を続けています。もともと当社は長く化合物の合成を得意としてきましたが、今では抗体や細胞というこれまでとは異なるアプローチからも創薬に取り組んでいます。
私自身も、大学医学部に留学したことをきっかけに、化合物ではなく細胞を活かした治療という新たな選択肢に出会い、驚きと感銘を覚えたことがあります。
当時、社内にそのアプローチを取り入れようと多くの人を巻き込みながら行動を起こした経験が今、米国での新たな挑戦につながっていると考えます。

SECTION02小野薬品の研究の強み~オープンイノベーションが息づく社風が、
視野を広げ、可能性を広げてくれる~

小野薬品はこれまで、
革新的な医薬品を世に送り出してきました。
なぜ、それが実現できたのでしょうか?

竹田

当社の研究を特徴づける一番のポイントは、世界の大学などと協働して新薬の創製につなげる「オープンイノベーション」だと考えます。小野薬品は、1960年代に米ハーバード大学に研究員を派遣し、企業として世界で初めてプロスタグランジンの全化学合成に成功したという歴史があります。「オープンイノベーション」という言葉が盛んに使われるようになる以前から、大学などの研究機関との提携を通じて新薬のタネを見出し、そのシーズを出発点として画期的な新薬を生み出してきました。このように半世紀以上にわたって脈々と、オープンイノベーションに基づいた研究が受け継がれています。
自分たちの世界に閉じ籠もって可能性を狭めてしまうのではなく、研究員一人ひとりのアイデアを大切にするのと同じくらい、国内外のアカデミアやバイオベンチャー企業との連携も大切にして、お互いの力を最大限に活かし合っていく。そんな研究の進め方をいつも心がけており、大学への留学にも積極的に取り組み、研究員の視野を広げることを大切にしています。

小野薬品では「オープンイノベーション」が
特別なプロジェクトに限られたものではない、
当たり前の存在なのでしょうか?

寺石

はい。オンコロジー研究センターにいる研究員も、若手のうちから国内外のアカデミアやバイオベンチャー企業との連携や、大学への留学を経験しながら、自分の知見と視野を広げ活躍しています。
私自身も、国内の大学に3年間留学をした際に、臨床の現場にふれたり、今私が取り組んでいるがん免疫分野での研究活動につながる細胞療法についての学びを得たりと、会社を出て外部に身を置くことで、新たな気づきを得ることができました。

浜崎

私も入社3年目を迎える頃に大学に留学し、とても良い経験ができました。共同研究に携わる大学と企業、それぞれの立場から見た考え方にふれることができ、その研究室のみなさんと新しいプロジェクトを起案して、挑戦することもできました。

SECTION03これからのがん領域での挑戦~米国のバイオ医薬品企業とともに、
がん治療の未来に貢献する~

研究者として、今チャレンジしていることや、
将来への想いを聞かせてください。

寺石

私は2024年の春より米国に渡り、Fate Therapeutics社とともにがん免疫分野の新しい治療薬の創製に向けた研究活動を進めています。まだ誰も証明していない治療法にチャレンジし、がん患者さんにとって新たな細胞治療法を提供すべく日々努力しています。

竹田

Fate Therapeutics社とは、2018年より創薬提携を開始し、一つの成果として、2024年より、製品候補の一つであるONO-8250が臨床試験に移行しています。 この創薬提携では、がん細胞を認識して攻撃するよう遺伝子を編集した「CAR(キメラ抗原受容体)-T細胞」と呼ばれる免疫細胞をiPS細胞からつくり、がん患者さんに投与します。Fate Therapeutics社は、iPS細胞からCAR-T細胞をつくる「iPS-CAR-T」の領域においてトップランナー企業であり、同社との創薬提携は、免疫力が不足している患者さんに対して、T細胞を体の外で準備し、投与することで免疫力を高めるという新しいアプローチになります。
既存のがん治療薬は全てのがん患者さんに効果を示すものではありません。だからこそ、この新しいアプローチを確立させて、がん患者さんの治療の選択肢を増やしたいと考えています。

浜崎

がん患者さんに新たな選択肢を届けることが、私たちの使命です。私は今、研究提携という仕事に携わり、国内外のアカデミアやバイオベンチャー企業と革新的な医薬品の創製を目的とした提携を推進する役割を担っているのですが、自分の手で実験を行っていた頃と気持ちは変わらず、新薬候補となる化合物一つひとつのポテンシャルを見逃さないよう心がけています。

竹田

新しい薬を世に届けることができなければ、私たちの挑戦はすべて失敗だとも言えます。しかし、「患者さんのために」という想いをみんなが持ち、「前例がなくても挑戦する」文化が小野薬品に根づいているからこそ、私たちはあらゆる失敗を糧にして、また次のチャレンジに臨むことができます。
患者さんのためにあらゆる可能性を検討しながら、がん治療の選択肢を広げ、がんを治癒できる世の中を目指していきたいと考えています。

掲載内容は取材当時のものです。